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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
「いずれも無類にござります」
「して三人の現金は?」
「ほとんど、無一文にござります」
「風采はよいが無一文? ちと受け取れぬ話ではないか」
「そこが値打ちなのでござります。高貴の方というものは、日頃金などは持ちませぬ」
「ふうむ。いかにもそれはそうじゃ。しかしそれほどの高貴の人々が、ここあたりをこの早暁に、何用あって歩いていたぞ」
「思うところあって家を出で、加賀へ参る道程、ここあたりを通ったのじゃと、老人の方が申されました」
「奇怪の奴らじゃ、いかに高貴とはいえ、小判一枚持たぬ身で、はるばる加賀まで参るとは、恐らく狂人か白痴であろうぞ!」
「白痴どころではござりませぬ。六十余州、広い日本を、隅から隅まで探しましたとて、必ずこれほどの賢人は二人とは断じてござりますまい! しかも異人にござります!」
「はて、異人じゃと? 名は何んと云うぞ?」
「オースチン師と申されます」
「や!」
と、いかにも驚いたらしい、劇しい叫び声が聞こえたかと思うと、衾を蹴るらしい音がして、内側から襖が開かれた。
そこから現われた一人の老人!
白の練絹の寝衣を着、同じ丸絎の帯を結びその身長高く八尺を越え、頭髪はさながら白銀の如く、延びに延び生えに生え、鬣のよう背を蔽い、まさに踵に達しようとしている。