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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

「そこでどっちが勝ちそうか?」

「云わずと知れた右衛門であろうよ」

「ところが」とまたも打ち消して、「いかにも初めはそう見えた。右衛門の勝利に見えていたが、俄然近頃は手の裏返すように、あったら遊君とは云われる島君、当世流に襟元に着いてあの悪者の紋十郎めに、まんざらでもない素振りを見せ、へばり付いているという事じゃ」

「どうじゃな気の毒な右衛門は、さぞ悲しんでいるであろうの?」

「ところがそれがそうでないのじゃ。暢気と云おうか馬鹿と云おうか、それとも気でも狂ったのか、怨めしいような顔もせず、ニヤニヤ笑っていると云う事じゃ」

「そこがあの男の偉いところだ。恋の相手は売物の遊君、しかも腸の腐った女。何んで利口な右衛門が、そんな女を張り合って、紋十郎ずれと争おうぞ」――こう噂に立てられた。

残った花桐

ここは和佐保の宿駅である。――天蓋山の鉱山からも、また船津の城下からも、ひとしく二里の道程を距てた、飛騨きっての歓楽境、例えば室の津、潮来のような、遊君または狡童などの売色の徒、館を並べ、箏、笛、鼓、太鼓の音が、日夜微妙の天楽を奏し、羈旅の人々を慰めるという、いわゆる今日での芸者町であった。