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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
流れる太刀、取り直す隙、また飛びかかる白狼、足を上げてはたと蹴る。ギャッと叫んで縮むを見棄て、飛び込もうとする窟の口から、紙の飛礫が飛んで出た。除ける間もなく足に当たる。と見る見るその紙飛礫、四方にパッと拡がったが、巨大な白蓮の花となり、人丸左陣を中へ包むと、その白蓮は窟の中へ見えぬ手に引かれてはいって行く。
遥かに見ていた天丸左陣、あッとばかりに驚いたが、見す見す仲間を見殺しにも出来ず、太刀を抜いて走って来た。と、虚空から時ならぬ桜花。あたかも雪の降るがように、サラサラサラサラサラサラ。天丸の体へ降りかかったが、体に着いたその落花は、払おうが叩こうが落ちればこそ、全身は落花のために包まれた。
やがて落花は降り止んだ。ヒラヒラと空から落ちるものがある。地上に下り立った霧隠才蔵、窟へ向かって声をかけた。「お師匠、捕らえましたかな?」
「人丸左陣奴は私が捕らえた」
「天丸左陣奴は私が捕らえました」
「窟の中へ連れておいで」
「はい」
と云ってポンと蹴る。天丸の体は窟の中へ鞠のようにころがって行った。
おりから、森の彼方から鬨の声がドッと上がる。
「はてな」と見るや才蔵の眼へ、不思議な一群が映って見えた。