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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
「いっそ断念して逃げようじゃないか」
「どうもそいつも残念だな」
「などと愚図愚図している中に酷い目に逢わされないものでもない」
「いやに怖気を振るい出したな」
「そう云うお前だって怖かろう」
「何んのこの俺がビクつくものか」
「おや大層お威張りだね」
「あたりめえよ、人丸左陣だ」
「天地人三才のその中でも、人が一番ビリッ尻じゃないか」
「なあにそいつを逆に読めば人が一番の頭にならあ」
「おや負け惜しみの強いことね」
「押しも強ければ腰も強い。とは云うものの地丸左陣は、俺にとっては確かに苦手だ」
「それじゃ尚の事逃げようじゃないか」
「そうさそれより仕方あるまい」
二人は窃かに決心し、それとなく逃げ道を探し出した。
裏山伝いに西南へ抜け、大島、安塚、三ノ郷、……ここまでうまく落ち延びさえすれば、大概大丈夫ということになった。
ある日朝から雪が降り、夜にはいると嵐さえ加わり、逃亡するには絶好という、物凄い荒模様となった。
「お銀。いよいよ逃げ出そうぜ」
「そうさ、今夜なんか持って来いだね」
二人は窃り囁き合い、裏口の雨戸をこじ開けた。二人ながら名誉の盗賊、こういう事はお手の物である。