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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
と、行手から人影が、息せき切って走って来た。まさに鳰鳥と擦れ違おうとした時、
「や、お前、お六じゃないか?」
その人影は声を掛けた。明るい秋の月影でその男をすかして見ると、キリッとした好男子だ。
「お前は誰?」
と鳰鳥は訊いた。
「オイ、お六坊どうしたものだ。従兄の俺を忘れるとは、アッハハハどうかしているな?」
「ああそうそう次郎さんだったね」
鳰鳥はクスクス笑いながら出鱈目の名を呼んで見た。
「じょ、じょ、冗談じゃねえ勘介だよ」
「ああそうそう勘介さんだったね」
「どうもこいつアやり切れねえなあ。勘介さんだもねえものだ。が、マアそれはどうでもいい。実はお袋に聞いて見ると、お館様の催しの踊りへ行ったというじゃねえか。しかもたった一人でよ。こいつにゃ俺も驚いた。お前の縹緻へ目をかけて、付け狙っている悪い奴らが、宿の中にも二、三人はいる。そいつアお前も知ってる筈だ。それだのにノコノコ出かけるとは、呆れて物が云えなかったが、と云ってうっちゃっても置かれねえ。そこで俺は大急ぎで迎いに来たというものさ。だがマア無事で安心した。さあさあ一緒に帰ろうぜ」
勘介という若い男は叱るように云うのであった。