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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

「いかにもお呼び止め申した。甚だ卒爾ではござりますが、ここまでお戻りくださるまいか」

「何のご用かは存ぜぬが、少しく先を急ぎます故……」

「決してお手間は取らせませぬ。折入ってお願い致したい事、お頼み致したいこともござるほどに、是非是非お立ち帰りくださるよう。それにここには焚火もあれば、当りながら談合を致したし」

頭領は執念く云うのであった。旅の侍と女とは二言三言囁いた後、渋々彼らへ近寄って来た。

「これはこれは早速おきき届けくだされ、誠にもって重畳重畳。さあさあ焚火におあたりなされ」

「そしてお手前のお頼みとは?」旅の侍は油断なく彼らをキッと見据えたまま、隙も与えずすぐに訊いた。

すると頭領は微笑を含み、

「まずその前に失礼ながら、ご身分を承知致したい。と申すのは他でもござらぬ、お手前はご浪人でござるかな? それともどこかのご家臣で……」

「以前は主人もありましたなれど、今は無禄の浪人でござる」旅侍はすげなく云った。

「ご浪人でござるとか結構結構。吾らにとっては好都合でござる……そこでもう一つお聞きしたい。お手前はここにいる我々どもを、何者と覚し召しおらるるかな?」