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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页

青空文庫

「一昨昨年の浅間の爆発が、いかに悲惨でありましたかは、ご存知のことと存じまする。人畜の死傷、家屋の倒壊は、申すまでもない儀にござりまして、酸鼻の極みにござりまするが、それは一時の災いとしまして、諦めますること出来まするが、百姓にとり何より大切の、田地田畑山林が、降灰、落石、熔岩、熱水それらのものによってことごとく荒らされ、全く用に立たなくなりました。それを営々辛苦いたして、三年の日子を費やして、わずかに昔日の俤とし、やれ嬉しやと思う間もなく、また昨年の大旱魃、で再び荒廃いたしました。しかるにご領主牧野遠江守様、すでに浅間の爆発も、数年前の出来事となった、昨年の旱魃は小天災、そのようなものは数に入らぬと、このようのこと仰せられ、爆発の際に発布されました、年貢ご免や割減らしの制を、昨年の秋より旧に復し、なお本年は早々に、検地尺入れをなされるとのご諚、申すまでもなく検地尺入れは、年貢高増徴のお目的でござる。……これで百姓ども生きられましょうか!」

冬次郎が遠江守であるかのように、郡兵衛は巨大な円らの眼を、白身だけにして睨むよう見詰め、声涙下るというような声で、そういって様子をうかがった。