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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页

青空文庫

ということが解って来た。

お吉と団八とは行方不明、そういうことも解って来た。

どうやら範之丞の死骸らしいものが、湖水から上がったということも聞いた。

ただし脇腹に突き傷がある。――これが九十郎には怪訝であったが、湖へ落ちた時杭などの先で、脇腹を突いたに相違ないと、そんなように解釈した。

数日をそこの旅籠で送った。

こうして現在になったのである。

先に行く二挺の旅駕籠の、提灯の灯に従いて歩いて行く。

塩尻の宿から西へ行けば、木曽を通って名古屋へ行け、東北の方へ辿って行けば、木曽街道を逆行し小諸の方へ行くことが出来る。

二挺の駕籠と九十郎達は、東北の方へ向かって行った。

夜が次第に明けて来た。

が、じめじめと降る雨は、容易のことでは止みそうになく、高原の細路は歩きにくかった。

とうに宿は出はずれてしまい、どっちを見ても曠野と山脈、森と林との世界となった。

やがて十四、五軒の小屋のような人家が、寒そうに塊まっている郷へ出た。

と、行手から人声がし、十数人の人々が、抜き身の槍や、竹槍を持ち、高張り提灯を立てながら、こっちへ歩いて来る姿が見えた。

浪人と百姓の一団らしい。