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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
02 こけ猿の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页
名所松の廊下
一
というお問いに答えるまえに、パチン、パチンと、ふたつ三つ将軍のお爪をきりましたが、ややあって、
「埋めある黄金をとりまいて、執念三つ巴、いや、四つ、五つ巴を描きそうな形勢にござりまする、はい」
と、左の足の小指へ鋏を移しながら、言上した。
名所松の廊下
一
「ふうむ」
と、八代様は、両手を縁につき、おみ足を愚楽老人の手に預けたまま、
「柳生の財産をめぐって、騒ぎをいたしおると?――じゃが、愚楽、その黄金が埋め隠してあるというのは、たしかな事実であろうな?」
愚楽老人は、またしばらく沈黙です。
すんだ鋏の音が、ほがらかな朝の空気に伝わって、銀の波紋のように、さわやかにちってゆく……。
「へい、事実も事実、上様が八代将軍様で、わっしが垢すり旗下じゃというくらいの紛れもない事実にござります。じゃがな、このことを知っているのは、柳生の大年寄、一風てえお茶師と、あっしぐらいのもんで、へえ。それも、そういう金が、柳生家初代の手で、どこかの山中に埋めてあるということだけは聞いておりますものの、所在は、誰も知りません」
「誰も知らんものを、どうして掘り出す?」
「それがその、こけ猿の茶壺と申す天下の名器に、埋蔵場所を記して封じこんでありますんで。