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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

「いや、わたしもはじめてで」

と、谷大八が横あいから、いぶかしげな眼顔。じつは、二人とも知っていたんです、玄心斎も、大八も。

お蓮様と丹波が、腹心の者十数名を引き連れて、近頃、この向島を遠く出はずれた渋江村の寮に、それとなく身をひそめて何事か画策していることを。

それも、この五、六日のことで。

だが、道場では、どこまでも、お蓮様も丹波も在宅のように装って、屋敷を明けていることはひた隠しにかくしているのだが、なんの交渉もないとはいえ、またいかに広い屋敷内でも、一つ屋根の下のこと――今まで知らなかったのは源三郎だけで、それだけに彼は、おどりあがるように馬上に身をひきしめ、

「おもしろい! これより押しかけて、ひと泡ふかせてくれよう。タ、タ、退屈しきっておったところだ。もう、あのにらみあいには、あきあきいたしたぞ。と言って、妻恋坂の道場では、先にも門弟が多いことだし、世間の眼というものもある。がまんにがまんをしてまいったが……ウム! この都離れた片ほとり、狐退治にはもってこいの場所だテ。おのれ、きょうというきょうは、かのお蓮と丹波を一刀のもとに、たたっ斬ってくれる」