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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
木曽へは方角違い
と忽然三度目の貝が前路に当たって響き渡った。
「おっ、いけねえ、また貝だ!」
叫ぶ間もなく二百余りの松火、タラタラと行手を遮った。ドッと起こる鬨の声が背後の方からも聞こえて来た。さらに起こる鬨の声、右手に当たって湧き起こった。背後に控えたは鎌髭の軍勢、左手に陣取ったは鳥市の兵、さて前面へ現われたはいかなる者の同勢であろう?
左陣と小銀は突っ立ったまましばらく様子を窺った。
木曽へは方角違い
その時一人の鎧武者が、雪を蹴立てて走って来たが、
「お使者いずれへおいでなさる。拙者は山寨の副頭領千坂杢之介と申す者、いずこまでもお供致す」
こう云い捨てるとトットッと元来た方へ引き返して行った。
「お供するとは迷惑だな。送り狼に尾行かれたようなものだ。お銀、どうしたものだろうな?」
「右手口だけ残して置いて、三方囲まれた上からは、開いている方へ行きましょうよ」
「ではボツボツ出かけるかな」
二人は気味悪く思いながら、右手すなわち東を差して、静かに足を運ばせた。すると三方の軍勢は、それに連れて粛々と東に向かって移動する。
雪は小止みにはなったけれど嵐はいよいよ勢いを加え、横撲ぐりに襲って来る。