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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

二

その模糊とした中から、櫓の音が流れて来て、嘴と脛の赤い水鳥が、ぱっと波紋をのこして飛びたつ――都鳥である。

吾妻橋から木母寺まで、長い堤に、春ならば花見の客が雑踏し、梅屋敷の梅、夏は、酒をつんでの船遊び――。

が、今は秋も半ば。

草紅葉の広い野に、まばらな林が風に騒いで、本郷の道場を出た時は、秋晴れの日和であったのに、いつしか空いっぱいに雲がひろがり、大川をくだる帆も早く、雨、そして風さえ孕んだ、暗いたたずまいである。

馬乗り袴が、さやさやと鳴る。

馬具がきしむ。

薄陽と河風を顔の正面にうけて源三郎は、駒の足掻きを早めた。

遠乗りの快味のほか、何ものもない彼の頭に、ただ一つ……。

さっき妻恋坂をおりきった街角に、人を集めて何か芸当を見せている二人の女遊芸人のすがたが、なんとはなく、印象にこびりついているのだった。

三味線を斜めにかまえて、チラと馬上の自分をあおぎ見た年増おんな。

十か九つの女の子が、扇子をひろげて何かのせていたが、通りすがりに馬の上からちょっと見ただけなので、よくわからなかったけれど。

あの二人の女芸人が、妙に源三郎の心をはなれない。