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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

「この四、五日、こっそりこちらへ養生にまいっておりました」

「それはいけませぬ。それで、もう御気分はよろしいのですか」

「はあ、ありがとう。もうだいぶいいのです」

「し、しかし、もう御養生の要も、あるまいと存じますが……」

「ええ、もうこんなによくなったのですから、ほんとに、養生の要もありません。近いうちに本郷のほうに帰ろうかと、思っていたところでございますよ」

「いや!」

と、源三郎のつめたい眼が、真正面からお蓮様を射て、

「いや、私が養生の必要がないと申したのは、そういう意味ではござらぬ。もう、母上……さればサ、今まで母上と思っていましたからこそ、手加減をいたしておりましたが……もはや母上と思わず、ここでお目にかかったのを幸い、お命をいただくことにきめましたによって、しかる以上、もう御養生の要もござるまいと、かように申しあげたので――」

ニッコリしたお蓮様は、

「このあたしがあなたの母では、たいへんなお婆さんのようで、あんまりかわいそうですよ、ほほほほほ。ですから、あなたももう母と思わずに、斬るというんでしょうが、なら、そこが相談ですよ、源様。おや! こちらにこわい顔をした人が、三人も並んでいては、お話がしにくいけれど、ホホホホホ……」