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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

六

このしまい方の乱暴さは、どうだ!

こけ猿の壺をひっつかまえて、ぶつけるようにすがりをかぶせる。そいつを、まるで裏店の夫婦喧嘩に細君の髪をつかむように、グシャッとつかんで、ぽうんと箱へほうりこむ。

グルグルっところがしながら風呂敷につつんで、――さて、主水正、またぽんぽんと手をならした。

出てきたのは、竹田を送り出して玄関から帰ってきた小姓だ。

「壺を見せたら、おどろいて帰りましたね。当藩はたいそうな金持になったと思ってるんだから、笑わせますね。こんな貧的な藩はないのに」

「コレコレ、よけいなことを申すな。しかし、この壺はよくできてるなア」

「じっさい、こけ猿にそっくりでございますね。よくもこう似せられたものですね」

「こいつを見せると、みな恐れ入って引きさがるからふしぎだ。こうやって、こけ猿は柳生の手に返ったと宣伝しておいて、その間に、一刻も早く真物を見つけださねばならぬ」

「何ごとも宣伝の世の中ですからね」

「くだらぬことを申さずに、この壺をその床の間へかざっておけ。客の眼につくようにナ。まだ来ない大名もあるから、きょうは一時に殺到するかも知れん」

小姓の手で、にせ猿の壺は、うやうやしく床の間の中央に安置された。