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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

八

宇都木さまだぜ。絵のような景色だなア」

八

その夜。

深夜の十二時をもって、賄賂の受付を締め切りました。

「いや、どうも、えらいめにあった」

田丸主水正は、そう言って、くたくたになって、奥庭の離れへもどってきた。

離室には、灯がはいって、勘定方と記入係の二人が、そろばんと帳面を前に、ぽつねんと待っていた。

「だいぶ押しかけましたな、締め切りまぎわに」

と、そろばんが言った。

「いまひととおり調べましたが、やっぱりどうも、別所さまの二つというのが、最低のようで」

帳面が、そうそばから言葉をそえた。

「まったくひどいめにあった。ドッコイショッ!」

家老の威厳もうちわすれて、主水正はそこへ、くずれるようにどっかりすわって、

「あの、石川殿の用人、竹田とやらがまいった時から、ずっとすわりつづけで、脚がもうしびれてしもうた。やれやれ」

「すこしおもみいたしましょうか」

「いや、それにはおよばぬ。しかし、驚いたなあ。きょうになって、こんなに来ようとは思わんかった。一時に、ドッときたよ」

「こう申してはなんですが、内証のくるしい方々は、持っていらっしゃる金子のくめんにお困りになって、それでこうギリギリおしつまるまで、のびのびになったのでございましょう」