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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
不思議な熱病
そういう事があってからものの三日も経たないうちに、苗木の城下、中津川の町に、奇怪な熱病が流行して、それにかかった人達は焦熱地獄の苦しみと八寒地獄の苦しみとを替わる替わるに苦しんだあげくの果てにコロリと一息に死ぬのであった。
そして病人の死ぬ時には西小寺の方角に何物かいて、さも嬉しそうな声を上げて、
「城下に疫病が出来ようぞ」
「死人で丘が出来ようぞ」
と、唄い踊って笑うのであった。
そして病人が苦しむ時にはきっと四つん這いに這い歩き狐のような鳴き方をした。
不思議な熱病
不思議な熱病の蔓延は恐ろしいほどに速かった。中津川の町の町人のほとんど全部がこれにかかり泣き声喚き声呪咀の声が城中へまでも聞こえて来た。
仁慈の大将花村甚五衛門は、城下の民のこの難儀をどうして眺めていられよう、糧米を分け薬湯を与え城中の武士を引卒して自分から親しく罹災者を見舞い、神社仏閣へ使者を遣わし加持や祈祷を行わせ、ひたすら病魔の退散と罹病者の平癒を願うのであった。
しかし疫病は日一日と益※(二の字点、1-2-22)猛威を逞しゅうし、斃れる人間の数を知らず、それこそ本統の死人の丘が町の真ん中に出来そうであった。