Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme

Aozora Bunko

「あ。帰れることは帰れるけれど……」

「じゃあ。一人で先に戻っておれ」

「権之助さんは?」

「おれは秩父の町へもどって、武蔵様のご様子をさぐり、もし、役人どもが理不尽にいつまでも先生を獄につないだまま、むじつの罪に墜し入れようとするならば、獄を破っても、お救いして来なければならない」

そういいながら、権之助が抱いていた例の杖を、大地について見せると、伊織は疾くからその杖の威力を知っているので、一も二もなくうなずいて、ここから別れて一人武蔵野の草庵へ帰っていることを承知した。

「賢い、賢い」

と、権之助は賞めて、

「無事に先生を救い出して、一緒に帰る日まで、おとなしく、草庵に留守をして待っているのだ」

そう諭すと、彼は、杖を小脇に持ち直し、再び秩父の方角へ向って行ったのであった。

で、伊織は、独りぼっちになった。けれど寂しいなどとは思わない。元々、曠野で育った自然児である。それに三峰へ来る時と同じ道を戻って行くのであるから、道に迷う心配もなかった。

ただ、彼はやたらに眠かった。三峰から山づたいに逃げ廻って来るあいだ、ゆうべは一睡もしていなかった。栗だの菌だの小鳥の肉だの、喰べ物は喰べているが、峠の上へ出るまでは、まったく眠りをわすれていたのである。