Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
三
ばばが帰ると、小次郎は、ざっと室内を掃いて、庭面へ井戸の水を撒いた。
山芋の蔓や、夕顔の蔓が、垣から手洗い鉢の脚にまでからみついている。その白い花の一つ一つが、夕風にうごき出した。
「きょうも、角兵衛どのは、宿直なのか?」
母屋に煙る蚊遣りを眺めながら、小次郎は部屋の中に寝そべった。
灯火はいらなかった。燈してもすぐ風に消えるであろうし、やがて宵月が、海を離れて、彼の顔まで映して来た。
……その頃である。
坂下の墓地から、垣を破って、この伊皿子坂の崖へ、一人の若い侍が、紛れ込んで行ったのは。
三
いつも、藩邸へは騎馬で通っているので、岩間角兵衛は、坂の下まで来ると、そこで馬を捨てる。
彼の姿を見ると、寺門前の花屋が出て来て、馬を預かってくれるのだ。
ところが、きょうの夕方は、花屋の軒をのぞいても、老爺が見えないので、自身で裏の樹へ繋いでいると、
「おう、旦那様で」
老爺は、寺の裏山から駈けて来て、いつものように、彼の手から馬を受取りながら、
「――たった今、墓地の垣を破って、道もない崖へ上って行くおかしなお武家があるので、そこは抜け道ではござらぬ、と教えてやると、怖い顔して、こちらを振向いたまま何処ともなく行ってしまいましたが……」