Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
十
「まるで、根なし草でもないでしょうから」
「もう、行く気?」
「ええ。そう聞いたら、あしたにでも、立ちとうございます」
「いや、待てよ」
城太郎は、以前とちがって、彼女についても、今では一ぱしの意見を持った。
「お通さんが、武蔵様と行き会えないのは、そういう風に、何かちらと、噂でも、影でもさすと、直ぐ一途に、それを的に行くからじゃないかな。時鳥の姿を見ようなら、声のした先へ眼をやらなければ見えないのに、お通さんのは、後へ後へと行っては、行き迷れているように思えるが……」
「それは、そうかも知れませんが、理窟のように、心のもてないのが恋でしょう」
お通は、城太郎になら、何でもいい得た。
けれど今、恋ということばをつい洩らして、城太郎の姿を見直すと、はっと思った。城太郎の顔いろも紅くうごいた。
もう城太郎は恋ということばを、手鞠のように、受取ったり返したりしていられる相手でなかった。人の恋より、彼自身が、それに悩む年配になっていた。
で。遽に、
「ありがとう。私も、よく考えてからにいたします」
お通が、穂を外らすと、
「そうなさい。そしてとにかく一度、姫路へ帰って」