Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
五
強いて求めれば、ゆうべ矢矧の辺りで家中らしい黒扮装の卑怯者を、二人も斬り捨てたので、それを取り上げて、何か難題を迫るのではなかろうか。
または。――日頃から自分をつけ狙っている何者かが、手にもてあまして、遂に、亘志摩という背後の黒幕を切って落し、正面からものいおうという陥穽か。
いずれにしても、吉い事であろうとは考えられない。にも関らず、身を迎えに委ねて行くからには、武蔵にも覚悟はあるのであろう。
その覚悟とは?
もし問う者があれば、彼は、
臨機。
と一語で答えるだろう。行ってみなければ分らないことなのだ。生兵法の推理はこの場合禁物である。機にのぞんで、咄嗟の肚を決めるほかに兵法はないのである。
その変が、行く途中で起るか、行った先で起るか。
敵が、柔をよそおってくるか、剛をあらわして来るか。
それも未知数である。
海の中を揺れて行くように、駕の外は暗く、そして松風の音だった。岡崎城の北郭から外郭の一帯は松が多い。さては、その辺をいま通って行くな――
「…………」
武蔵は覚悟の人とも見えない姿だった。目を半眼に閉じ、うとうとと、駕の中で眠っていた。