Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
四
(何を!)
と、伊織の幼い精神の中にも、鏘然と、火華が発しるのだった。
武蔵は、それを感じると、すぐ、彼の気を誘って、
「来いっ」
いいながら、魚が交わすように、さっと、肩を落しながら身を退いてやるのだった。
伊織は、あッといいながら、飛びかかる。――武蔵の姿はもうそこにはいない。――一転して振り向くと、自分のいたところに武蔵はいる。
そして、最初の時と同じ姿勢にまた、回るのであった。
「…………」
「…………」
いつかそこらは、しとどに夜露が綴っている。眉に似た月は、杉林の陰を離れ、そこから風の落ちてくるたびに、虫の音はみな息をひく。昼はさほどとも見えない秋草の花々も、顔を粧ってみな霓裳羽衣を舞うかのように戦ぎ立つ。
「…………」
「よし、これまで」
武蔵が、木剣を下ろして、それを伊織の手へ渡した時、伊織の耳に初めて、裏の杉林のあたりに、人声が聞えた。
四
「誰か来たな」
「また、泊めてくれと、旅の人が迷って来たんでしょ」
「行ってみろ」
「はい」
伊織は、裏へ廻って行った。
武蔵は竹縁に腰かけて、そこから見える武蔵野の夜をながめていた。もう穂芒が穂をそろえ、草の波には秋の光がある。