Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
四
「何も、お辞儀はせんでもよい。心のうちに、今申したことさえ刻んでおれば」
「……だけど」
伊織はやはり気が済まなくなったらしい。秋草の花を折り集めて石の前に捧げた。そして掌を合せかけたが、ふと振り顧って、
「先生」
と呼び、何か、ためらい顔にいい出した。
「――この土の中の白骨が、ほんとに、先生が今いったような、忠臣ならいいけれど、もし足利尊氏の方の兵だったら、つまらないなあ。掌なんか合せてやるのは癪にさわる――」
この返辞には、武蔵も窮した。伊織は、武蔵の明答がない限りは、滅多に掌をあわせない様子を示して、彼の顔をながめながら、その答えを待っていた。
――ふと、きりぎりすの声が耳につく。仰ぐと昼間の薄い月が目にとまった。しかし、伊織に与える返辞はなかなか見つからない。
やがて、武蔵はいった。
「十悪五逆の徒にも、仏の道では救いがある。即心即菩提――菩提に眼をひらけば、悪逆の徒も仏もこれを許し給うとある。――まして白骨となってしまえばもう」
「じゃあ、忠臣も逆賊も、死ねば同じものになるんですか」
「ちがう」
と、厳しく、そこに句点を打って、
「そう早合点してはならぬ。