Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
四
もうきれいに諦めた。……だがまた、気がかりにもなるのだ。……頼むから、お通をさがし出して、お通の望みをかなえてやってくれい」
四
その晩。――もう夜も更けきった丑満の頃。
黙々と、松風の闇を、八帖の山門から、麓へ降りて行く武蔵の姿が見られる。
腕を拱いて。
俯向いて。
彼が自分でいうところの無為と空虚の悩みが足もとにも纒っているような歩みで――。
今、本堂で別れて来た又八の言葉が、松かぜに洗われても、いつまでも、耳から離れなかった。
――頼むから、お通の身を。
と、真剣でいった又八のあの声である、顔つきである。
自分へそういった又八も、いい出すまでには、幾夜となく、悶えたであろう。苦しかったであろう。――と思いやられる。
だが、より以上、見苦しい迷いと、苦悶とは、かえって自分にあることを、武蔵は否めなかった。
……頼むから!
掌を合さないばかりにいってしまった又八は、それまでの、日夜の焔から遁れて、後は却って、解脱の身のすずしさに、泣きぬれて、悲しみと法悦との、二つのふしぎな疼きのなかに、ほかの生き効いを、胎児のように、今は索っている気もちであろう。