Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
彼女は、飛びたつような心地を、頬の色にも秘め切れず、
「……明日にも」
と、此所を立ちたい希望を小声に洩らした。
兵庫も、また、
「さもあろう」
と、頷くのだった。
自分も、永くはここに留まっていない。年来、招かれている尾張の徳川義直公の聘に応じて、ともあれ一度、名古屋まで行くつもりである。
――だがそれも、帰国の叔父を待って、祖父の本葬をした上でなければ去り難い。なるべく途中まででも送ってやりたいが、そういう訳だから、其女が先に立つとすれば、一人旅をせねばならぬが、それでも、よいか。
去年の十月末に出した江戸の便りが、年を越えて今頃やっと着くほど、道中の駅逓も、宿々の秩序も、表面は穏やかに見えながら、まだ完全でない社会である。女のひとり旅は、覚束ない気もするが、それも其女に覚悟があることならば――
こう兵庫が、念を押すと、
「……はい」
お通は、彼の親身も及ばない好意を、沁々、胸に受け取って、
「旅には、馴れておりますし、世間の辛さにも、少しは覚えがございまする。その辺のことは、どうぞお案じ下さいませぬよう」
さらば――と、その夜は彼女の身支度と、小やかな別れの宴に送って翌る日の朝。