Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
兵庫の身はもう外に在る。厩から一頭曳き出して、それへ乗ると、宇治のほうへまっしぐらに駈けていた。
だが――
彼はその途中で、ふと考え直した。
武蔵が、将軍家師範に成る成らないなどということは、彼女の恋にとっては何らの問題でもない。
彼女はただ、ひたむきに、武蔵と巡り会いたいのである――
ああして、四月も待たず、ひとりで立ったのを見ても。
書面を示して、
(一度、戻っては)
とすすめた所で、空しく戻るはずもない。ただ徒らに、彼女の心を、折角な旅を、暗澹と、沈ませてしまうに過ぎまい。
「……待てよ」
兵庫は、駒を止めた。柳生城から小一里も来てからであった。もう一里も駈ければ、或は、追いつきもしよう。――だが彼は、その無益を悟った。
(武蔵と会って、二人が会った欣びのうちに語りあえば、こんなことは、些細な問題)
彼は、のどかに駒を柳生のほうへ引っ返した。
いや、路傍に芽ぐみ出した春の色はうららかだし、彼の姿ものどかには見えたが――彼のみが知る胸にはまた、纏綿たる後ろ髪を引くものがないではなかった。
(もう一目でも)
その未練があるからこそ、彼自身、駒をとばしてお通のあとを追ったのではなかったか。