Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
三
三
そういう危険が、絶えず身を窺っているのを、無可先生自身は、
(知れたもの――)
と、およそ多寡をくくってでもいるのか、今日も、隣家の内儀に注意されたばかりなのに、晩になると、
「お隣のご夫婦、またちょっと留守にいたすが、頼みまする」
声をかけて、出て行った。
筆屋の夫婦は、開け放して、晩飯をたべていたので、その姿が、軒先をよぎる時ちらと見えた。
鼠無地の単衣に、編笠をかぶり、出て行く時は、大小を横たえてはいるが、袴もつけず、着流しの素服。
袈裟、掛絡をまとえば、そのまま、虚無僧といった風采である。
筆屋のかみさんは、舌打ちして、つぶやいた。
「いったい何処へ行くんだろうね、あの先生はさ。子供たちの指南は、お午前にすんでしまうし、午からは昼寝だし、晩になると、蝙蝠みたいに、出かけて行く……」
亭主は、笑って、
「独り者だ。仕方がないさ。他人の夜遊びまで、妬いてたら、限りがないぞ」
露地を出ると、宵の岡崎は、夕凪のむし暑いほとぼりが冷め切れないうちにも、夏の夜の灯が戦ぎ立って、人影の流れの中に、尺八が聞え、虫籠の虫の音が聞え、座頭の節をつけた喚きだの、西瓜売りや鮨売りの呼び声や、また、夜歩きに出た旅人の浴衣の群れなど――さすがに江戸のような新開地的なあわただしさと違って、落着いた中に城下町風情がある。