Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
……なあお通、世間を狭くしてまで、無理に武蔵と添ってみたって、倖せに暮せるはずはないぜ。おまえは、お甲のことをまだ疑っているかも知れねえが、あんな女とは、もうきれいに手を切っているのだ」
「伺ってもむだなこと、そんな話、お通の存じたことではありません」
「……じゃあこれ程に、おれが頭を下げても」
「又八さん、あなたは今、おれも男だと仰っしゃったではありませんか。恥を知らない男などへ、どうして女の心がうごきましょう。女の求めている男は、女々しくない男です」
「なんだと」
「お離しなさい、袂が切れますから」
「ち、ちくしょうっ」
「どうするんですっ――なにをなさるのです」
「もう……これまでいっても分らねえなら、破れかぶれだ」
「えっ……」
「生命が惜しいと思ったら、武蔵のことなど思いませんと、ここで誓え、さあ誓え」
袂を離したのは、刀を抜くためであった。刃を手に抜くと、刃が人間を持ったように、又八の人相はまるで変ってしまった。
九
刃物を持った人間はそう怖いものではないが――しかし、刃物に持たれている人間は怖い。
お通がとたんに、
ひいっ――と声をあげたのも、刃物の先よりも、又八の顔にあらわれたその恐さだった。