Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
三
又八は、醒めた酒を思い出したように、
「さあ、そうきめたら、今夜の丑満ごろまでは、ゆっくり骨を休めておかなけれやならねえ。……おふくろ、少し早いが、晩飯の一本を、今から酌けて貰おうか」
「酒か。……ム、帳場へいうて来やい。前祝いに、わしも少し飲もう程に」
「どれ……」
と、億劫そうに、手を膝にかけて起ちかけたと思うと、又八は、なにを見たのか、あっと横の小窓へ大きな眼をみはった。
三
ちらと、白い顔が窓の外に見えたのであった。又八がびっくりしたのは、単にそれが若い女であったというだけではない。
「やっ、朱実じゃねえか」
彼は窓へ駈けよった。
逃げそびれた小猫のように、朱実は木蔭に立ち竦んでいた。
「……まあ又八さんだったの」
彼女もびっくりしたような眼をそこにみはって。
そして、伊吹山のころから今もまだ、帯か袂か、どこかに付けているらしい鈴が、顫えるように彼女の身動きとともに鳴った。
「どうしたのだ、こんなところへ、どうして不意に来たのか」
「……でも、わたしここの旅籠に、もうずっと前から泊っていたんですもの」
「ふウム……、そいつあちっとも知らなかった。じゃあ、お甲と一緒にか」