Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
二
武蔵としては、そんなふうにしか下手人を考えられなかったが、それとて闇をつかむようなもので、野婦之池の方角というだけを目あてに急いでみたが、陽が暮れると、冴え切った星空に反して、地上の暗さは、一尺先の足元も覚つかない。
第一、野婦之池とか聞いたが、その池らしい所へもなかなか出て来なかった。そして田も畑も森も、ゆるい傾斜に乗って、道も少しずつ登り気味なのを考えると、すでに駒ヶ岳の裾野を踏んでいるらしいが――と武蔵は立ち迷い、
「道を間違えたな?」
と、思った。
行く手を見失ったように――そうして広い闇を見まわしていると、駒ヶ岳の巨大な壁を負って、一叢の防風林に囲まれた農家から、なにか外で焚いている明りか、竈の火か、ぼうと赤い光が木立ちの垣に映して見えた。
近づいて、そこの地内を覗いて見ると、武蔵にも見覚えのある斑の牝牛が――ただしお通のすがたはどこにも見えないが――その牛だけは健在に、明りの映している百姓家の厨の外に繋がれて、無事に啼いているではないか。
二
「……お? あの斑牛だが」
ほっとして武蔵は胸をなで下ろした。
この家に、お通の乗っていた牛が繋がれているからには、お通の身も、共にここへ連れ込まれていることはもう疑う余地もあるまい。