Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
二
とうとう我を折ったように、
「又八、少し負うてくれぬか。後生だによって、少し負うてくれい」
といった。
又八は、顔を顰めた。
面を膨らませたまま、返辞もせずに待っていたのである。すると、お杉婆も彼もぎょっとしたように耳を欹てた。――先に城太郎も驚き、お通も聞いた、あの針の山の悲鳴に似た女の叫びを、この母子も聞いたのであった。
二
どこともわからない、たった一声したきりの悲鳴だった。次の悲鳴がしたら声の方角も的確に知れよう。――それを待つもののように、又八も婆も、じっと空虚な顔して、疑惑の中に立ちすくんでいた。
「……あっ?」
突然、お杉婆がこういったのは、その不審な悲鳴がまた聞えたのではなく、なに思ったか、又八が不意に、崖の角につかまって、そこから谷へ降りて行こうとする様子を見たからであった。
「ど、どこへ行くのじゃ」
あわてて、咎めると、
「この下の沢だ」
もう崖道へ身を沈めかけながら又八がいう。
「おふくろ、ちょっと、そこに待っていてくれ。――見て来るから」
「阿呆」
お杉婆は、つい、いつもの口癖を出して、
「なにを捜しに行くのじゃ、なにを? ……」
「なにをッて、今、聞えたじゃねえか、女の悲鳴が」