Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
八
「なぜ?」
と突ッかかってゆく。
病人の顔は、弟のその語気から血の気を呼び出されて、うす紅くなった。
「勝てないからだ!」
激越に、こう吐くと、
「たれに」
と、伝七郎も蒼くなっていう。
「武蔵に!」
「たれが」
「知れているではないか。おまえがだ。おまえの腕ではだ――」
「ば、ばかなことを」
わざと大きく笑うように、伝七郎は肩を揺すぶった。そして、兄の手をふりほどいて杯へ自分で酒をついだ。
「――おい門人、酒がないぞ、酒をもって来んか」
八
声を聞いて、弟子の一人が、厨房から酒の代りを運んでゆくと、もうそこの病室に、伝七郎はいなかった。
「……おや」
眼をみはって、その門人は盆を下へ置くと、
「どうなさいました若先生」
夜具の中に俯つ伏している清十郎の様子に、ぎょっとしたような顔いろを動かして、枕元へ取りすがった。
「呼べ。……呼んで来い。伝七郎にもいちどいうことがある。伝七郎をここへ連れて来い」
「ハ、ハイ」
弟子は、清十郎の語気が、はっきりしているので、ほっとしたらしく、
「はっ、ただ今」
と、あわてて伝七郎を捜しに出て行った。
伝七郎はすぐ見つかった。彼は道場へ出て、久しく見なかったわが家の道場の床に坐っていた。