Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
三
「富士山をごらん」
「富士山にゃなれないよ」
「あれになろう、これに成ろうと焦心るより、富士のように、黙って、自分を動かないものに作りあげろ。世間へ媚びずに、世間から仰がれるようになれば、自然と自分の値うちは世の人がきめてくれる」
「渡船が来たよ」
子供は、人に遅れるのが嫌いだ。伊織は、武蔵をさえ捨てて、真っ先に乗合の舷へ跳び移った。
三
広い所もあれば、狭い所もある。河の中には洲もあるし、流れの早い瀬も見える。何しろ当時のすみだ川は、自由気ままな姿であった。そして両国はもう海に近い入江であり、波の高い日は、濁流が両河岸を浸して、平常の二倍にも見える大河になった。
渡船の棹は、ガリガリと、川底の砂利を突いてゆく。
空の澄んだ日は、水も澄み切って、舷から魚の影が覗かれた。赤く錆びた兜の鉢金などが、小石の間に埋っているのもまま見えた。
「どうだろう、このまま天下泰平に治まるものだろうか」
渡船の中の話である。
「そうは行くめえなあ」
と、ひとりがいう。
その連れが、連れの者の言葉に裏書して、
「いずれ、大戦さ。――なけれやそれに越したことはねえが」
話は、弾みかけて弾まなかった。