Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
六
「まだッ、まだッ。勝負はまだだっ。逃げるなっ」
と、追いかけて来た。
武者羽織は、向き直って、尋常に待ちかまえていたが、火の玉のような負傷が、
「まだ、お、お、おれはまだ、生きてるぞっ」
喚いて、斬りかかると、此方は、一歩退いて、相手を泳がせ、
「これでも、まだかっ」
西瓜を割ったように、人間の顔が斬れてしまった。斬った刀は、武者羽織の背中に負っていた「物干竿」とよぶ長剣であったが、肩越しに、柄を持った手も、斬り下げた手元も、眼には見えないほどな技であった。
六
刀を拭っている。
それから、流れで、手を洗っている。
度々、この辺で、斬合を見つけている者でも、その落着きぶりに、嘆息をもらしたが、また余りにも、凄愴なものに打たれて、なかには観ているだけで、蒼ざめてしまった者もある。
「…………」
とにかく誰も、その間、一語を発しる者もなかった。
手を拭いた牡丹色の武者羽織は身を伸ばして、
「岩国川の水のようだ。……故郷を思い出すなあ」
と、つぶやいて、しばらく、隅田河原のひろさや、水をかすめて飛び翻る燕の白い腹を見送っていた。
――やがて彼は、急に足を早めた。