Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
九
「だが、お通さん。……考えてみると、わしは知らず識らず、そなたに嘘をついてきた。千年杉の時から、花田橋の時から、欺く気持ではなくても、形はそうなって来てしまった。そして酷い冷たい態を装って来た。わたしはもう一刻後には死ぬ身だ。お通さん、今いう言葉は嘘ではない。わしはそなたが好きだ。一日でも思わぬ日のなかったほど好きだった。……なにもかも捨ててともに暮して終りたいとどれほど思い悩んだかしれない。――そなた以上好きな、剣というものがなかったら」
九
ことばを休めて、
「お通さん!」
とさらに、ことばに力をこめ直して、武蔵はなおいった。
いつも無口で無表情な彼がめずらしく感情のなかに没し切って、
「鳥将に死なんとするやだ。将に死なんとしているこの武蔵だ。お通さん、わしの今いう言葉には微塵、嘘も衒いもないことを信じてくれ。――羞恥も見得もなくわしはいう。今日まで、お通さんのことを思うと、昼もうつつな日があった。夜も寝ぐるしくて熱い熱い夢ばかりに悩まされ、気の狂いそうな晩もあった。お寺に寝ても野に伏しても、お通さんの夢はつき纒い、しまいには薄い藁ぶとんをお通さんのつもりで抱きしめて歯がみをして夜を明かした晩すらある。