Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
二
……ええ、こちらはそれどころじゃない」
お通は、お通でまた、
(そうだ、さっき旅籠へ迷って来たあの女――あの女に違いない)
武蔵と――朱実と――小次郎と――そう三人の関係を、いくら考えても解せない想像の中にのぼせて、ぼんやり見送っていた。
「……もどろう」
婆は、がっかりしたように、諦めの言葉を投げて歩き出した。たしかに地主権現と書いてあったのに、又八は来ないし、滝の音の寒さは毛穴をよだたせる。
二
すこし道を降りてゆくと、本願堂の門前で、また、さっきの小次郎に二人は出会った。
「…………」
顔を見あわせただけで、どっちも黙って通りすぎた。お杉が振向いて見ていると、小次郎の影は子安堂から三年坂のほうへ、まっ直に降りてゆく様子――
「険しい眼づかいをするよのう。……武蔵のようじゃ」
つぶやいているうちに、婆の視線がなにへ触れたのか、ぎくと、背のまるい体に衝動を見せて、
「……ほう!」
梟の啼くような声を出した。
巨きな杉の樹の蔭だ。――たれかその蔭に立って、手まねきしている。
婆の目にだけは、闇でもわかる人影だった。又八にちがいない。
(――来てくれ、こっち)
手で物をいっているのはその意味らしい。