Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
毒歯
一
権之助は棹を持ち、その代りに、彼の手にあった松明は武蔵が持ち、辷るように池の中央を横切って行った。
水の上を行く松明の火は、暗い水に映って、一倍赤々と見えた。――その流るる焔を、お通はその時、眼に見ていたのである。人の世の皮肉といおうか、飽くまで薄縁な二人の仲といおうか、場所も、そう遠くない所から。
毒歯
一
水に映る火影と、小舟の中に人のかざしている火と、深夜の池心を行く松明は、一つの光でありながら、ちょうど二羽の火の鴛鴦が泳いでゆくように遠くからは見える。
「……オオ?」
お通がそれを知った時、
「やっ、誰か来る」
と、狼狽ぎみに、声を出して、お通の縄尻を引っ張ったのは又八で、大それたことをやるくせに、何か事にぶつかると、臆病な持ち前はすぐ体に出してしまう。
「どうしよう? ……そうだ、こっちへ来い。やいっ、こっちへ来やがれ」
そこは楊柳につつまれている池畔の雨乞堂であった。なにを祠ってあるか郷土の人もよく知らないが、ここで夏の旱に雨を祈ると、うしろの駒ヶ岳からこの野婦之池へ沛然と天恵が降るということが信じられている。
「いやです」
お通は動くまいとする。