Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme

Aozora Bunko

三

床板に蓆は敷いてあるが、そこからも風が洩る。

「おじさん、先刻、泥鰌が欲しいといったね。泥鰌、好きかい」

童子は、前に畏って訊く。

「…………」

武蔵は、それに答えるのを忘れて、この子供を見つめていた。

「……何を見ているのさ」

「幾歳になるの」

「え」

と、童子はまごついて、

「おらの年かい?」

「うむ」

「十二だ」

「…………」

土民の中にもよい面魂の子があるもの――と武蔵はなお惚々と見るのであった。

洗わない蓮根みたいに垢で埋まった顔をしている。髪は蓬々と伸びて、小鳥の糞みたいな匂いがする。しかし、よく肥えていることと、垢の中にくるりと光っている眼のきれいなことはすばらしい。

「粟飯も少しあるよ。泥鰌も、もうお父さんに上げたから、喰べるなら、下げて来てやるよ」

「すまないなあ」

「お湯ものむのだろ」

「湯も欲しい」

「待っといで」

童子は、がたぴしと、板戸をあけて、次の部屋にかくれてしまう。

柴を折る音や、七輪をあおぐ音がする。家の中は忽ち煙で充ちてくる。天井や壁にたかっていた無数の昆虫が煙に追われて外へ出て行く。

「さ、できた」

無造作に、食べ物が床へじかに並んだ。塩からい泥鰌、黒い味噌、粟飯。