Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme

Aozora Bunko

四

生々と夏を待つ地上の何物よりも、晩春の碧落を彩る虚空何物よりも、彼の顔一つが、いちばん楽しそうであり、また、溌剌としていた。

「……この間のあの容態では、まだ病床にいるかもしれない。でも、わしのあの手紙が届いたら、すぐ起きて、城太郎とふたりして追いついて来るだろう」

牝牛は時々、草を嗅いで止まった。草の白い花も、武蔵には、星がこぼれているように見えた。

楽しいことだけしか考えられない今の武蔵であったが、ふと、

「おばばは? ……」

と、谷間を見渡し――

「一人でまた、仆れたまま苦しんでいるのじゃないか?」

などと心配してみたりする。――それもこれも、今なればこそある余裕だった。

もし人に見られたら恥かしいと思ったが、お通へやった手紙の中に、彼はこういう意味のことを書いたのである。

花田橋のときは、そなたが待った

こたびは、わたしがそなたを待とう

ひと足先に、大津へ出、瀬田の

唐橋に牛をつないでいる

くさぐさの話、その節

彼は、そう書いた自分の文言を詩のように、口のうちで幾たびも暗誦し、さて――くさぐさの話のたねまで今から胸に描いている。

峠の背に、旗亭が見えた。