Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme

Aozora Bunko

三

「ア。――待たしゃれ」

お杉婆は、呼び止めた。ひどく慌てて手をあげたのである。

そして辺りを見廻した。武蔵のすがたが見えないので、婆は安心したもののように、

「女子。……わしにも、その牝牛の乳をくれぬか。ひと口、飲ませてくれまいか」

渇き切ったような声をふるわせていう。

お易いことですと、女が乳の瓶をわたすと、婆は、瓶の口へ唇をつけて、眼をつぶりながらそれを飲んだ。唇の端から流れた白い汁が、胸を垂れて、草にもこぼれた。

「…………」

胃に満ちるまで飲んでから、婆は、ぶるっと身をふるわせ、すぐ吐きそうに顔をしかめた。

「……ああ、なにやら不気味な味よの。したが、これでわしも、達者になれるかも知れぬ」

「おばあさんも、どこか体がお悪いのかえ」

「なあに、大したことはない。風邪熱のあったところを少し手ひどく転んでの」

いいながらお杉婆はひとりで起ち上がっていた。牛の背に乗せられて、ウンウン呻いていた病態はその時少しも見えなかった。

「女子……」

声をひそめて、寄り添いながら、もいちど鋭い眼を、武蔵のために配って、

「この山道を、真っすぐに行ったら、どこへ出るのじゃ」