Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
「どなたか其処で待ち合っていらっしゃるようなお話でしたが」
「ならばまだいそうなものだが……」
「誰もいませんな」
「さあて?」
沢庵が、腕を拱むと旅籠の手代も共に頭をかかえて、独り言に、
「子安堂のそばの燈明番に聞いたら、あのご隠居と若い女子が、提燈を持って、登って行くすがたは見たといいましたね。……それから三年坂のほうへ降りたという者も誰もいないし」
「だから、心配になるんだよ。ひょっとすると、もっと山の奥か、もっと道のないような場所かも知れぬ」
「なぜでございます」
「どうやら、お通さんは、おばばのうまい口に乗せられて、いよいよ、あの世の門口まで、攫われて行ったらしい……アア、こうしている間も心配になる」
「あのご隠居は、そんな恐ろしいお方ですか」
「なあに、いい人間だよ」
「でも、あなたのお話を伺うと……思い当ることがございますんで」
「どんなこと」
「きょうも、お通さんと仰っしゃる女子が、泣いておりました」
「あれはまた、泣虫でな、泣虫のお通さんというくらいなんだよ。……だが、この正月の一日から側に引き寄せられていたといえば、だいぶチクチク虐められたろうな。かあいそうに」