Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
……え、朱実、おまえの奪われた処女のみさおは、あれで、見事に報復されたというものじゃないか」
「…………」
朱実は、小次郎という人間が、とたんに、清十郎以上、呪わしい、怖ろしい、嫌な人間に思われてきた。
清十郎は自分をこうさせた、けれど清十郎は悪人ではない、悪人という程腹の黒い人ではない。
それから比べると、小次郎は悪人だ、世間で定義されているような悪人型ではないが、人の幸福を欣ばないで、人の禍いや苦しみを傍観して、自分の快楽に供する変質人である、そういう者は、盗賊をするとか、横領するとかいう型の如き悪人よりは、もっと質のわるい、油断のできない悪人という者ではないだろうか。
「帰ろう」
小猿を肩にのせて、小次郎はいいだした。朱実は、この男の側から逃げたいと思った。――しかし、妙に逃げきれないものを感じて、その勇気が出ないのである。
「……武蔵を捜してみたって、もう無駄だ。いつまで、この辺りにうろついているはずはない」
ひとり語をいいながら、小次郎は先へ歩いてゆくのである。
(なぜ、この悪党のそばを、離れられないのか、この隙に、逃げてしまわないのか)
と、朱実は自分の愚かさを怒りながら、やはりその後に尾いて、歩かずにいられなかった。