Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme

Aozora Bunko

十

「じゃあ、お師匠様」

手放しの泣き顔を、不意と、武蔵へ振向けると、最後の一縷へ縋りつくように、

「――修行がすんだら、その時は、お通さんとも仲よく会うの。え、え。お師匠様の修行が、もうこれでいいと、いう時が来たら」

「それはもう、そうなればなあ……」

「それは何日?」

「何日ともいえぬ」

「二年?」

「…………」

「三年?」

「修行の道には果てがない」

「じゃあ、一生涯もお通さんと会わないつもり」

「わしに天稟があれば、道に達する日もあろうが、わしに素質がなければ、生涯かかってもまだこのままの鈍物でいるかも知れん。――それになによりは、目前に死を期していることがある。――死んで行く人間がなんで、これから花も咲こう実も成ろうとする若い女子と、ゆくすえの約束などを誓えよう」

武蔵が思わずその点まで口を辷らすと、城太郎には、そこの要点はまだよく理解し難いものと見え、すこし怪訝そうに、

「だから、……お師匠様、そんな約束なんかしないことにして、ただお通さんと会えばいいじゃないか」

と、したり顔にいう。

武蔵は城太郎に対して、いえばいう程、自身のうちに矛盾を感じ、迷いを覚えて、苦しくなった。