Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
明日待酒
一
例の旅籠屋である。石ころの多い坂の途中から、汚い長屋門の下を駈けぬけ、畑の奥の離屋まで来ると、
「おふくろ」
と、部屋のうちを覗き、
「――なあんだ、また昼寝か」
と舌打ちして呟いた。
井戸端で一息つき、ついでに手足も洗って上がって来たが、老母はまだ眼もさまさず、どこが鼻か唇かわからないほど、手枕に顔を押し潰して鼾をかいているので、
「……てえっ、まるで泥棒猫みたいに、暇さえあると、寝てばかりいやがる」
よく眠っていると思っていた老母は、その声にうす目をあいて、
「なんじゃあ?」
と起き上がってきた。
「おや、知ってたのか」
「親をつかまえて、なにをいうぞ。こうして、寝て置くのがわしの養生じゃ」
「養生はいいが、おれが少し落着いていると、若いくせに元気がないの、やれその暇に手懸りを探って来いのと、びしびし叱りつけながら、自分だけ昼寝しているのはなんぼ親でも勝手すぎようぜ」
「まあゆるせ、ずいぶん気だけは達者なつもりでも、体は年に勝てぬとみえる。――それにいつぞやの夜、おぬしと二人して、お通を討ち損ねてから、ひどう落胆してのう、あの晩、沢庵坊めにおさえられたこの腕の根が、いまだに痛んでならぬのじゃ」