Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
十
に懸けていない人間。――そういう男に縋って男の死を追って、鈴虫のように死んではつまらぬことではないか。女には女の生きる道がある。女の生きがいはほかにもある。――お通さん、これがお別れのわしのことばだ。……では、もう時刻もないから――」
武蔵は、彼女の手をそっと解いて、立ち上がった。
十
解かれた手は、またすぐその袂を追って、
「武蔵様、待って」
と、かたく縋った。
さっきから彼女にも、いいたいものが胸いっぱいに閊えていた。
武蔵が、
(虫のように生きて、虫のように死ぬ女の恋には、死の意義がない)
といったことばや、
(一歩、おまえから離れれば、わしはおまえのことなど、頭の隅にも置いていない男だ)
といったような言葉にも、お通は決して、そんなふうに武蔵を見て、穿き違えた恋をしているのではないことをいいたかったが、なんとしても、
(もう二度と会えなくなるのだ)
と思うさし迫った感情に克てなかった。それ以外のなにもいえなかったと、理性することもできなかった。――で今、
「……待って」
といって、袂を引き留めたものの、やはりお通も、不可抗力なものでただ纒綿と泣くだけの女性をしか示すことが出来なかったのである。