Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
「出会えッ」
「此処だっ」
後の六、七名は時々、絶叫をふり絞って味方へ急を告げた。だが如何せん三道へわかれている味方は皆、本陣とは相当な距離をおいて潜伏しているので、まだ極めて秒間に過ぎないここの異変を少しも知らず、また彼らの必死なさけびも、松風や大竹藪の戦ぎにまぎれて、むなしく宙へ消えてしまう。
保元、平治の昔から、平家の落人たちが近江越えにさまようた昔から、また親鸞や、叡山の大衆が都へ往来した昔から――何百年という間をこの辻に根を張って来た下り松は今、思いがけない人間の生血を土中に吸って喊呼して歓ぶのか、啾々とと憂いて樹心が哭くのか、その巨幹を梢の先まで戦慄させ、煙のような霧風を呼ぶたびに、傘下の剣と人影へ、冷たい雫をばらばらと降らせた。
――一個の死者と三名の傷負は、息一つする間にこの緊りつめた圏内から無視されてしまったのだ。相互がハッと呼吸を改めたせつなには、武蔵は自分の背を下り松の幹へひたッと貼りつけていた。ふた抱えもある松の幹は絶好な背の守りかに見える。しかし武蔵はそこに長く膠着していることはかえって不利としているらしい。眼ざしは、けわしく刀のみねから七つの敵の顔をひきつけながら次の地の利を案じていた。