Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
五
もう勘弁ならぬという顔を示して、又八が近づくと、城太郎は牛を楯にして、二、三度、お通の下をぐるぐると逃げ廻ったが、とうとう襟がみをつかまれてしまい、
「さあ、もう一遍いってみろ」
「いうともッ」
長い木剣を半分まで引き抜いた時、彼の体は、並木の外の藪へ、猫みたいに抛り飛ばされていた。
五
藪の下は、畦の小川であった。城太郎は泥鰌のようになって、元の並木へ這いあがった。
「……おやッ?」
往来を見廻すと、牛は、お通を背に乗せたまま、重い体を揺さ振って、彼方へ駈出しているではないか。
その手綱を引っ張りながら、手綱の一端をムチに打ち振り、共に砂を上げて、駈けてゆく影は、又八に相違ない。
「ちっ、畜生」
彼の血は、それを見るや、一時に頭へのぼって、自分の責任感と小さい力のみを奮い起し、急を他へ告げて、はやく策をとることを忘れてしまった。
動いているのであろうが、白い雲の帯は、動いているとも目には見えない。
雲表にある駒ヶ岳は、その広い裾の一つの波ともいえる丘に足を休めている一人の旅人へ、何か無言のことばをかけているように、鮮やかに仰がれた。
(はて。おれは何を考えていたろう?)