Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
「いいや、そうでねえ。おらの体にも木曾侍の血は流れている。御岳の神前に二十一日の祈願をかけ、夢想の中に、杖の使い方を悟ったこの権之助だ、なんで名もない牢人ずれに――と、幾度も自分では思ってみるが、あの牢人の姿を見ると、どうしても、手が出ねえだ。手を出す先に、駄目だと思ってしまうのだ」
「杖をもって、必ず一流を立てますると、御岳の神に誓ったそなたが――」
「でも、よくよく考えてみると、今日までのことは皆、おらの独りよがりだった。あんな未熟で、どうして、一流を興すことなどできるものか。そのために貧乏して、おっかあに飢じい思いをかけるより、きょう限り、杖を折って、一枚の田でもよけいに耕したほうがいいとおらあ考えただが」
「今まで、多くの人々と手合せしても、一度として、負けたということのないそなたが、きのうに限って敗れたのも、思いように依っては、そなたの慢心を、御岳の神がお叱りなされて下されたのかも知れぬが、そなたが杖を折って、わしに不自由なくしてくれても、わしが心は、美衣美食で楽しみはせぬ」
そう諭してから、老母はなおもいうのだった。奥のお客が眼醒めたら、改めてもう一度、技を競ってみるがよい。