Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
――常人には到底考えられない心理の中に、しかし、この老母は自若としているのだ。万人が何といおうが、自分だけは深く信じるところがあるもののような姿をして――。
「…………」
べたんと、坐ったまま、肩をすこし前へ落し、行儀よく両手を膝にかさねている。幾人の子を生み、幾人の子を亡くして、貧苦の中に耐えてきた肉体か、その姿はいかにも小さい。そして萎みきっている。
――だが今、武蔵と権之助とが、何尺かの土の間に対峙して、
「では」
と、戦端を切ったせつなに、老母の眸は、天地の仏神が皆集まってそこから覗いているような、巨大な光を発した。
彼女の子は、すでに武蔵の剣の前に、その運命を曝していた。武蔵が鞘を払った瞬間に、権之助はもう自分の運命がわかったような気がして、体がさっと冷たくなった。
(はて、この人間は?)
と今、観えて来たのである。
いつぞや、わが家の裏で、不用意に闘って感得した敵とはまるでその体が違う。文字でいうならば、彼は、草書の武蔵を見て、武蔵の人間を律していたが、きょうの厳粛で、一点一画もゆるがせにしない、武蔵の楷書の体を見て、自分が敵を量るに、意外なまちがいを抱いていたことを覚ったのである。