Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
「何をする?」
と、河の中の声にぎょっとして首を上げた。
武蔵の足は、橋を離れて、飛沫の中の岩の上に、鶺鴒が止まったように立っていた。
「――あッ」
抛り出した丸木橋の端が、白い飛沫を途端に散らした。その水玉の傘が地まで落ちないうちに、河中の鶺鴒はぱっと跳んで返って、いわゆる抜く手も見せない間髪に、狡智に長けたその卑怯者を斬り撲った。
――こんな場合、武蔵は、斬った死骸には眼もくれなかった。死骸がまだ蹌めいているうちに、彼の剣は、もう次の何ものかを待っている。彼の髪は、鷲の逆毛のように立って、満山皆敵と観るもののようであった。
「…………」
果たして、ぐわあん! と谷間の擘けるような音が渓流の向う側からとどろいた。
いうまでもなく、猟銃の弾である。弾は正しく、武蔵の在った位置を、ぴゅんと通りぬけ、後ろの崖土の中へ潜った。
弾が土の中へ入った後から武蔵も同じところへ仆れた。そして対岸の沢を見ていると、蛍の火みたいな赤いものがチラチラする。
――二つの人影が、そろそろと河べりまで這い出して来る。
一足先に冥土へ立った卑怯者は、後の二人の仲間は、立場の居酒屋でのみつぶれていると嘘をいったが、先へ廻って、待ち伏せの手ぐすね引いていたのである。