Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
それゆえに、いくら想いを懸けたところで、届き難い心地がして、同時に、自分の荒びかけた境涯も顧みられ、
(所詮、かなわぬ恋)
という弱気な諦めにつつまれてしまうのだった。
けれど、その武蔵の生活の影に、もうひとり、べつな女性の影が重なっていると想像すると――朱実の諦めは、到底、灰をかぶせられた埋め火のままではない。
「城太さん、ここじゃ、他の人の目がうるさいから、戸外へ行かない?」
「町へかい」
出たくて耐らなかった折なので、そう誘われると、一も二もない。
旅籠の庭木戸をあけて、ふたりは宵の往来へ出る。
二十五宿といわれる八王子の燈は、今までの何処よりも繁華に見えた。秩父や甲州境の山の影が、どっぷり町の西北を囲ってはいるが、ここに纏まっている宵の燈には、酒のにおいだの――博労の声だの、機屋のおさの響きだの、問屋場役人の呶鳴る声だの、町芸人の佗しい音楽だのがつつまれて、人間の聚楽を賑わしていた。
「あたし、お通さんていうひとのことは、又八さんからよく聞いてたけれど、いったい、どんな女――」
朱実は、ひどくそれが、気になり出したらしい。
武蔵のことは、ひとまず胸の隅へあずけておいて、彼女の胸には、お通という者に対して、何か、燃えるようなものが、焦々、立ちはじめていた。